「また切れ痔か」と思ったら
相変わらずどこにも痛みはないのだが、下血の頻度は増すばかりだった。
変わったことといえば、下痢状の便しか出なくなったこと。
そして、時折ゼリーのような血液の塊が排出されるようになったことである。
さすがに初めての経験だった。
症状について調べると、痔や潰瘍性大腸炎でよく起こる症状とのことだった。
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お尻をふいたときにペーパーに血のようなものがつく
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腹痛を伴わない
といった場合には、一旦様子を見てもよいとあった。
しかし、
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ゼリー状の血の塊が何度も出る場合
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腹痛、下痢を伴う場合
には、速やかに病院を受診するようにともあった。
私は迷った。
どうせまた、いつものように痔と診断されるだけだろうと。
だが、念のため肛門内科を受診することにした。
何もなければそれでいいんだもの。
そう思っていたのに。
すべての始まり~鮮血に染まる便器~
ある日の仕事終わり。
職場のトイレで用を足し、振り返った時のことだった。
便器が血の海と化していた。
元来、未病に悩まされてきた人生だった。
大きな病気には殆ど罹ったことはないが、原因不明の体調不良になりやすかった。
特に消化器や泌尿器が弱く、小さい頃から便秘や下痢を繰り返してきた。
成人してからは、ガス型の過敏性腸症候群だと診断された。
立っていられないほどの激しい腹痛で、通勤途中に救急搬送されたこともある。
腸のレントゲンは、真っ白な影で埋め尽くされていた。
白い影の正体は、すべてガスと便だった。
そんな私にとって、下腹部の張りや切れ痔、イボ痔は日常茶飯事だった。
褒められたことではないが、血便や血尿も見慣れたものである。
しかし、だ。その時ばかりは違和感を覚えた。
さすがに便器が真っ赤に染まるほどの出血は未経験だった。
しかも、それだけの出血量にも関わらず、少しの痛みも無いのだ。
おなかも、肛門も、全く痛くなかった。